現段階での、わたしのAIの使い方を整理しておきます。AIが成長していくように、おそらく、このAIとの付き合い方も変わってくるでしょう。それを定点的に記録しておくことは、のちのちの自分にとってはもちろん、この文章を読んでいる方の一助になると思います。
いま、わたしはChatGPT、Gemini、Claudeという3つのAIを使用しています。それぞれのAIの特徴と違いを、長所と短所も含めて整理してみます。
まず、OpenAI社が提供しているChatGPTです。会話形式でのコミュニケーションが得意で、自然な対話を実現します。情報提供、文章作成、アイデア出しなど多用途に対応可能です。
強みとしては、柔軟な応答と幅広い知識で、ユーザーの意図を理解しやすい点です。用途例としては、ブログ記事の作成、カスタマーサポート、言語学習の補助などによく使われています。
一方で、情報の正確性に時折課題があり、事実と創作を混同することがあります。また、複雑な文脈や微妙なニュアンスの理解には限界があることも認識しておく必要があるでしょう。
2つめはGoogleが提供しているGemini(ジェミニ)です。高度な分析力と問題解決能力に優れており、特にビジネスデータや技術的な内容に強みを持ちます。
複雑な情報の整理や意思決定の支援を得意とします。データ分析のサポート、市場調査、企業戦略の立案支援などのビジネス面でのユースケースが目立ちます。
ただし、創造的な文章作成やエンターテイメント性のある対話では、他のAIに比べてやや機械的な印象を与えることがあります。また、最新のトレンドや専門分野によっては、情報の更新が追いついていないケースも見受けられます。
3つめは、Anthropicが提供しているClaudeです。感情理解と倫理的な対応に重点を置いたAIで、人間との共感的な対話を重視しています。
優れた倫理的判断と繊細なコミュニケーション能力を持ち、メンタルヘルスサポートなどの医療分野、教育分野での指導、感情的な相談対応などに使われることが多いです。特に安全性と価値観の一致を重視して設計されているため、機微な話題でも適切に対応できる点が魅力です。
しかし、高度な専門知識を要する分野では情報の深さが不足することがあり、特に科学技術や最新のビジネストレンドについては他のAIに譲る場面もあります。また、慎重さゆえに創造的な発想では制約がかかることもあるでしょう。
これらのAIは、それぞれ異なる設計思想と目的で開発されています。
誤解を恐れずに書くと、ChatGPTは汎用性が高く、多目的に使うことができますが、正確性では注意が必要です。
Geminiは分析と意思決定支援に特化してビジネスに強いといえますが、人間味のある対話では物足りなさを感じることもあります。
Claudeは感情と倫理に配慮した対話で、人間的なサポートが得意ですが、専門的な内容では深掘りが限定的なこともあります。
人間と同じで、同じAIといっても、微妙に得意分野や性格が違うということですね。
つまり、なにか1つのAIを使い込むというよりは、目的に応じて使い分けることが大切なのではないでしょうか。
人間を採用して、その特性に応じた仕事や役割を割り当てるのと同じと、わたしは考えています。それぞれのAIの特性を理解し、適材適所で活用することで、AIとの良い関係が築けるのだと思います。
したがって、わたしは、仕事ではGeminiを使っています。勤めている会社がGoogleと契約したくれたというのももちろんありますが、Geminiの分析力の強さはビジネス向きであることは上記の通りです。
とにかくビジネスでは、本来やりたい目的を実現するために発生する周辺業務やタスクが多いです。たとえば、お客様の情報を収集して整理する、デモンストレーションを作るために、あるシナリオに即したデータを準備する、といった雑務に忙殺されます。これをGeminiに任せるのです。
Geminiは一瞬でネットから情報を集めてくれて、お客様の情報を整理してくれます。いままでいろんなサイトを検索して情報集め、整理してレポートするだけで何時間かかっていたでしょう。Geminiなら3分で完了です。デモシナリオのデータを作るのも、いままでは下手をすると丸一日かけていました。
同じくGoogleが提供しているNotebookLMは、ネットの情報だけでなく、PDFやドキュメント、テキスト、音声データなど手元の資料を解析して整理してくれます。
仕事は、目標とそれを達成するための戦略、戦術から成ると考えています。目標を考えるのは人間の仕事です。それを達成するための環境をどのように整えるか、戦略を考えるのも人間の仕事です。しかし、そのためにどういう戦術(タスク)が必要か洗い出したり、実際にその戦術を実行するのは、もうAIの仕事なのかもしれません。
まだ今は、データになっていない情報や、人間しか観察できない感情や、空気といったものがあるので、目標や戦略を考えるのは人間の仕事ですが、いずれそれらがすべてデータ化されれば、目標や戦略を考えるのもAIになるかもしれません。
しかし、どこまで行っても、人間とAIは協業関係にあることは変わりません。AIに提供する情報とその結果AIから返ってきた行動の責任を負うのは人間の仕事だと思います。
一方で、個人的な創作活動には、ChatGPTとClaudeを使っています。ChatGPTは一時期使わなくなっていたのですが、Apple Intelligenceが日本語対応してから、そのバックエンドのサービスとして、また使うようになりました。
ChatGPTは、もっぱら文章を書くときの支援です。文章を書いていて、ちょっと校正させるとか、ある内容を調べさせてそれを要約してもらってそれを元に文章を書くといったことをやっています。
たとえば、歴史的事実、本能寺の変について簡単に文章に追記したいときは、純正メモアプリで作文ツールを呼び出し、「本能寺の変について簡単に要約してください」などと聞くと、下記のように返ってきます。
「本能寺の変(1582年)は、織田信長が家臣の明智光秀によって京都の本能寺で襲撃され、自害に追い込まれた事件です。信長は天下統一目前の実力者でしたが、光秀の突然の裏切りによってその志半ばで倒れました。この変事により、日本の歴史は大きく動き、やがて豊臣秀吉が台頭するきっかけとなりました。」
ネットを検索したり、本で確認しなくても、さくっと教えてくれます。もちろん、本格的なファクトチェックのときは自分で史料を調べますし、本でも確認します。あくまで下書きを書くときに使うための一時的なツールという位置づけです。
文章を書いているとき、調子に乗っているとどんどん書き進むことができますが、知識や情報がネックになって筆が止まることがあります。そういうときにAIがサポートしてくれて、思考を妨げることなく知りたいことがスッと出てくるというのは、記憶力に自信がなくなってきたわたしとしては、ありがたい機能です。
なお、Apple Intelligenceは、まだちょっと不安定で、Macの純正メモアプリでこの作業をすると、メモアプリがクラッシュすることがあります。このあたりは、将来のアップデートで改善してほしいところです。
毎日noteに書いているエッセイの校正や、小説を書くときのアイディアの壁打ちはClaudeを使っています。エッセイは毎日書きますし短いので、ドラフトは自分で書いた方が速いです。
それをClaudeにチェックしてもらいます。Claudeの指摘は正しいときもあれば間違っているときもあるので、間違っているときは面倒くさくても指摘するようにしています。そうすることで、次回からの精度が上がるような気がしています。
小説を書くときは、まず、わたしが書きたい小説の概要をClaudeに教えます。テーマ、登場人物、舞台、どういう小説にしたいか、といったまだわたしも頭の中で像を結んでいない、分断した情報をインプットします。
Claudeはそれらのパズルを、それなりに組み合わせてくれます。それをたたき台にして、わたしとClaudeの議論が始まります。
いままでは、自分の頭の中だけでやっていた議論やアイディア出しを、Claudeと一緒にやっているイメージです。こんな心強い相棒はいままでいませんでした。相手がAIだからこそ、本音やちょっと人には言えないこともぶつけることができるのです。
Claudeの出してきたアイディアが気に入らなければ、気に入らないといいます。また、わたしからこうするといいのではないか、といったアドバイスもします。Claudeから逆にアドバイスをもらうこともあります。
そうやってプロットや骨組みが固まってくると、一度Claudeにドラフトを書いてもらいます。ドラフトを何度も読み込んで、気に入らないところをどんどん変えていきます。
構成や登場人物もまるっと変わってしまったこともあります。そうやって書き上がったものをまたClaudeに読み込ませます。
こういった作業を延々と繰り返すのです。体感ですが、いままで自分だけでやっていた5倍くらいの初稿ができあがります。
その中でわたしが納得して腹に落ちるのは、1、2編だけです。それを人様に読んでいただけるかどうかは、また別の話です。
以上のように、現在のところ、わたしは日常的にAIを活用しています。あくまで定点的な観測でしかありませんが、使っていて間違いなくいえることは、使っている人と使っていない人の差は、ますますついてくるということです。
メインの仕事に必ずついて回る雑務。これを自分だけでやらなくて良くなるだけで、生産性は全く変わります。
また、わたしのように歳をとって、経験値は上がっても記憶力や柔軟性に乏しくなった人間でも、第2の脳としてAIを活用することで、まだまだ仕事も創作活動もできるのではないかという確信があります。
たしか、トマス・ハリスの小説『ハンニバル』で、主人公レクター博士が自らの記憶力を強化するために「知の殿堂」と呼ばれる想像上の建物を脳内に築いており、その中に情報や経験、芸術的な記憶などを体系的に保存している様子が詳細に描かれています。まさにAIは、このレクター博士の「知の殿堂」の役割を果たしてくれるのではないでしょうか。
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