私を絶望の淵に追い込んだ上司の言葉

コラム

ある外資系のITベンダーに勤めていた頃のお話しです。

当時この会社は大規模な買収戦略を推進しており、グローバルで数社の買収を完了させていました。いずれの企業も日本法人があり、当然日本にも影響がありました。

この会社が日本で採った統合案は、これらの買収会社を自社本体に吸収統合するのではなく、別法人を立ててそちらに統合するものでした。いわば、これらの会社を寄せ集めて会社を1つ作ったわけです。

私は当時本体側でプロダクトサポートの責任者をしていました。私に下りた辞令は、この関連会社にサポートの責任者として転籍することでした。

ちょうど後進も育ち後を任せても良いかなと思っていましたし、何か新しいことにチャレンジしてみようという気持ちもあって、決してネガティブに受け取ったわけではありません。複数の文化も技術的なベースも異なるメンバーを一つのチームとしてまとめる仕事は、やり甲斐があるように思いました。

1点だけ気になったのが、転籍ということです。転籍は出向と違って片道切符です。戻って来られる保証がないのです。ちょっと悩みましたね。この会社自体は好きでしたし、思入れもあったので、戻って来れないのはちょっと寂しい(結局は立ち上げ後、無事戻ってこられたのですが)。

上司から飲みに誘われたのはちょうどその時でした。今考えたら、私の異動の背中を押すために誘ったのでしょうが、当時は飲めるのが嬉しくてホイホイとついていきました。

その人が、飲み会の最中に私に本を1冊手渡してくれました。もう書名も忘れてしまったのですが、戦艦大和とその護衛をしていた駆逐艦たちの話で、いかに駆逐艦の役割が重要かということを論じたものでした。

上司はこの本を渡してくれただだけで、その中身には一切触れませんでした。もちろん、帰宅してその本を読みました。恐らく、本社を戦艦大和、寄せ集めの別会社を駆逐艦に例えて、その重要性に気づいて欲しかったのだと思います。

この本のことも心に残っているのですが、この上司とのサシ飲みで、私は彼に座右の銘を聞いてみました。彼の回答は即答だったことを覚えています。

無限大の努力

その場でひっくり返りそうになりました。この上司は、私が非常に尊敬している方で、今までの人生を振り返っても、おそらくほぼ唯一、私が心酔しているといって良い人です。今でもその気持ちは変わっていません。

なんとかこの人に追いつきたい、この人のようになりたいと思って頑張ってきたつもりでしたが、その人の座右の銘が「無限大の努力」。彼に無限大に努力されたのでは、追いつきようがありません。私はその言葉をいただいた時、嬉しさよりも絶望感の方が強かった記憶があります。

というわけで、私にとって「心に残る上司の言葉」は、

無限大の努力

です。

この言葉をいただいて以来、私は1日もこの言葉を忘れることはありません。今の自分を省みて、果たして自分が無限大に努力しているのかどうか、甚だ心許ないのですが、少なくとも、常に胸に置いて、日々生きていきたいと思っています。

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