大分に帰省してきても、朝の散歩は欠かせません。
出張のときと同じように近くの名所旧跡を探しましたが、見つかりませんでした。
やむなく、高校時代自転車で通っていた道を辿ることに。
歩きながら、陽が昇ってくる様子が見えます。黒い地平に薄紫の光が滲んで、気付くと白い光線に包まれていました。
高校時代、好きだった女の子のことを思い出しました。前もどこかで書いたかもしれない、告白しきれなかった彼女のことです。
彼女の家は、散歩道に面している小高い丘の途中にありました。
わたしはここまで2人で自転車に乗ってきて、家まで彼女を送ったのでした。
記憶はもう曖昧です。道も景色も同じはずなのに、あの場所は茫漠たる記憶の彼方にあって、もうここにはありません。
散歩道の近くに、古い神社がありました。
古く、もう参拝する者も少ないのでしょうか、木々が茂り、森に呑まれたようになっています。
この神社もあのとき、わたしたちを見ていたに違いないのです。
あれは本当にあったことなのだろうか。
ふと、そんな気がしました。
その後のわたしの記憶が作った幻ではないのか。
わたしは黙々と歩き続けました。福岡を歩くときとも、萩の町を歩くときとも異なる感覚です。
わたしの記憶は
あの神社のように、もう42年もの年月に覆われて、朽ちて判別もつかなくなっているのかも知れません。
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