新山口から萩に向かうバスの中で、私は自分の顔が怖いものになっているのがわかりました。四国での仕事を終えて帰路についたはずなのに、精神的にも肉体的にも疲弊しきっていて、普段なら気にならない子供たちの声さえ、やけに耳についてイライラしてしまう。そんな自分が嫌でした。
それから約2時間後、萩のスーパーから家に向かう夜道で、私は完全に元の自分に戻っていました。
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明倫館のバス停で降りて家に着くまでの30分ほど、雨が降っていました。その雨と一緒に、自分の中にあったどす黒いものが少しずつ流れ落ちていくような気がしたのです。家に着くと隣の方とばったり会い、自然に挨拶を交わします。玄関前には雑草が生い茂っているけれど、それさえも愛おしく思えました。
家に入って最初にしたことは、スーツを脱ぎ捨ててシャワーを浴びることでした。本来なら着いたらすぐに窓を開けて空気を入れ替えるのですが、18時を過ぎていたので、まずは夕食を買いに近所のスーパーへ向かうことにしました。
Tシャツとジーパンに着替えてスーパーに向かう途中、雨が止みました。そして蝉の声が聞こえてきました。その瞬間、完全に自分の中の悪いものが流れ去っていくのがわかったのです。スーパーまでの20分ほどの道のりで、私は元の私に戻っていました。
あまりにも嬉しくて、缶ビールを1本買いました。家に戻り、オンラインで相方と乾杯をして、買ってきた夕食をいただく。もちろん窓は全開にして、夜風を存分に部屋に通しました。
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昨日の出張が終わった時点では、福岡に帰るか萩に帰るか悩んでいました。福岡には猫たちがいるし、相方もいます。でも、萩を選んで正解でした。もし福岡に帰っていたら、私の中の嫌なものはそのまま残っていたでしょう。もしかしたら猫や相方に迷惑をかけていたかもしれません。
夜は仕事を一切しませんでした。相方とオンラインの友達がゲームをプレイするのを聞きながら、ゆっくりと目を閉じて心と体を休めました。一晩経って今朝も、例によって曇り空の中を1時間ほど散歩してきました。やはり私はこの町が好きです。
今日は少し大きめのスーパーに行って、軍手と草刈りの道具を買ってこようと思います。玄関前の雑草をきれいに刈って、来週以降、相方と猫たちを迎えられるように準備したいです。
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私が去年からここに住みたいと思って準備していたのは、まさに今回のためだったのではないかと思いました。萩という土地がなければ、私はこの夏を乗り越えられなかったかもしれません。それほど、なぜか精神的にきつい状態だったのです。
今回ほど萩という土地に感謝したことはないかもしれません。「帰る場所」があるということの意味を、初めて本当に理解した気がします。それは単に住む場所があるということではなく、自分を浄化してくれる場所、元の自分に戻してくれる場所があるということなのです。