静けさと集中の町 — 萩滞在の総括

コラム

今回の萩滞在は、ほぼ一週間。先週木曜日に移動し、今日火曜日に福岡へ戻ることになります。当初は、週半ばの東京出張の準備に追われ、本業の仕事だけで終わってしまうかもしれないと思っていました。けれど、予想に反して小説のほうにも大きな進展がありました。

まず、今後書きたいテーマが二つ思い浮かびました。それに加え、長編小説の全体プロットと各章の概要をまとめることができたのです。これは大きな収穫でした。

木曜日は到着した日ということもあり、一日自宅で仕事に集中しました。本当は明倫館のコワーキングスペースを使いたかったのですが、打ち合わせが立て込んでいて外出する余裕がなかったのです。あのスペースはとても便利ですが、ウェブ会議用のブースが1時間単位の予約制で、長時間連続で会議をする自分にとっては、やや使いづらいと感じました。

結局、金曜日もほぼ自宅で仕事。ウェブ会議の合間には、東京出張に向けたデモンストレーションの準備を進めました。こうして自宅での作業を重ねるうちに、ひとつ大きな課題にも直面しました。インターネット環境です。テザリングだけでは安定性に欠け、業務に支障をきたすこともありました。今後の拠点活用を考えると、光回線の導入は避けて通れないかもしれません。コストはかかりますが、必要な投資と考えるべきなのでしょう。

とはいえ、仕事の合間にふと顔を上げれば、指月山の稜線が目の前に迫り、ただそれを眺めるだけで気持ちがすっと軽くなる。家の中で煮詰まったときには、ふらりと外へ出て散歩し、木戸孝允の家を訪ねて座敷で正座をしながら考え事をする──。そういった行動が気軽にできることも、この町ならではの豊かさです。

今回、改めて思ったのは、本業のITの仕事だけでなく、小説を書く環境としても萩は理想的だということです。静けさのなかで集中でき、次々とアイディアが湧いてくる。そしてふと気づいたのですが、この滞在中、テレビもYouTubeもまったく見ていませんでした。福岡にいると、どうしてもテレビやゲームに時間を割いてしまいがちですが、ここではそれがなかった。その分、仕事と創作にまっすぐ向き合えた実感があります。

こういう環境は、簡単に得られるものではありません。今回の滞在を経て、萩という町が、わたしにとって人生の重要な拠点になることは間違いないと、あらためて確信しました。

タイトルとURLをコピーしました