有休消化のため金曜日にお休みをいただいて、金、土と一泊二日の旅に出てきました。
行き先は山口県の萩です。福岡から車で3時間ほど。パーキングエリアで休み休み、ランチを食べたり、土地の名物をつまんだり、ドライブを楽しみながら向かいました。
途中、下関市立美術館に寄って、青池保子さんの原画展を観ました。
わたしには妹がいたので、妹が購読していた雑誌に連載されていた『エロイカより愛をこめて』とか『Z』などを盗み読んでいた覚えがあります。
原画の緻密さ、美しさには心底驚かされました。こんな小さな原稿の中に、これだけ濃密な作画をしていたのかと、現代のデジタルの世界では考えられない生の技術に溜息が出るほどでした。
萩に着いたのは夕方、4時ころでした。天気も回復してきて、青空が広がり、山の緑、日本海の濃い青に、目が洗われるようでした。
宿の部屋には温泉が付いていて、焼き物でできた湯船に入りながら日本海を眺めることができました。時間を忘れて湯に浸かり、のぼせてきたら外に出てビールを飲んで身体を冷やし、また湯に浸かるという贅沢な時間を過ごしました。
朝は5時過ぎに目が覚めたので、宿の近くを散歩しました。ちょうど朝陽が海から昇る直前で、海の向こうに広がる山の稜線が光りの筋に縁取られていました。今年は、佐賀関に行く機会が無くて、海に行かないまま夏が終わってしまったのですが、ここでこんなに美しい海に出会えるとは、思いもしませんでした。
薄暗い街が少しずつ白い空気に染められていく中、右手に見える海岸の端にこんもりとした山が見えてきます。かつてこの山にはお城がありました。萩城です。
その城跡をぐるっと回って、城下町へ歩みを進めます。碁盤の目状の街並みは整然としていて、静かに息づいているようにも見えます。毛利の武士たちが、長州の志士たちが、白壁の向こうからぶらっと姿を現しそうな、そんな佇まいが続きます。
萩、大好きになりました。今までいろんなところに旅行しましたが、こんなに心を動かされたのは初めてかも知れません。でも、観光や漁業、農業以外に産業と言える産業はなく、過疎化も進んで空き家が増えていると聞きました。昼になって、妻と散歩していたときにも、古民家のような屋敷が売りに出されているのを見かけました。
YouTubeなどを観ても、萩の空き家を買い取ったり賃貸で移住してきている人が結構多いようですね。とても気持ちが分かります。特に都会を長く経験した人間にとっては、この、歴史がそのままそこに、時間のエアポケットのように、手つかずに残されているような感覚に、すっかり魅了されてしまうことでしょう。
わたしは今住んでいる福岡が大好きなので、移住することはないですが、2軒目の拠点として物件を探してみるのも良いかなと思ったりしました。
実際は、地元の人たちとの関係とか、田舎あるあるの問題も多いでしょうから、この想いは妄想だけになってしまうと思いますが、ここに住んでみたいな、そういう気持ちにさせるほど、心が揺さぶられたのは確かです。
ずっとこの街を、空気を、歴史を、いまのままなんとか残していってほしいですね。またきっと、訪れます。今度は、季節を変えて。
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