東京のことを、私は知らなかった

コラム

昨日から1泊2日の東京出張に来ています。宿は日本橋のホテル。朝起きて、恒例の散歩にどこへ行こうかとGoogleマップを開いて探します。30年以上東京にいたというのに、意外と東京のことを知らないことに気づかされました。

オフィスは東京駅の方面なので、せっかくなら反対方向に歩いてみようと思い、見つけたのが「深川不動堂 成田山東京別院」と「富岡八幡宮 深川八幡」でした。門前仲町にあるこのふたつの寺社は、片道約33分。往復でちょうど一時間。今朝の散歩にはぴったりです。

茅場町の駅から10号線に沿って東へ、永代橋を渡って、門前仲町を目指します。門前仲町を過ぎればすぐ左手に深川不動堂、そして富岡八幡宮が現れました。早朝のためか、ほとんど人の姿はなく、静かな空気に包まれていました。昼間は観光客で賑わうのでしょうが、今朝はただの街の呼吸がそこにありました。不動堂にも八幡宮にもお参りをして、すぐに折り返します。

小雨が降っていましたが、傘は不要なほどの細やかな雨でした。むしろ涼しくて、歩くには最適の天気です。隅田川にかかる永代橋を戻る途中、不思議な光景に出くわしました。橋の真ん中に、ぽつんと魚が一匹、落ちているのです。たぶんアジでしょう。魚屋が落としていったのか、どこかの猫が持ち込んだのか、朝の東京が投げかけてきた小さな謎でした。

ホテルに戻ったのはちょうど63分後。よく歩きましたが、心地よい疲れでした。

改めて思います。東京に30年以上いたとはいえ、私が知っていたのはほんの一部に過ぎなかった、と。とくに下町方面は、ほとんど足を運ぶことがありませんでした。今回のように少し歩くだけでも、味わい深い風景がそこかしこにあります。古い井戸のような情緒が、通りの幅や、裏路地の空気感に、かすかに残っています。建物は新しくても、地面には江戸の記憶が刻まれているのでしょう。

私の生活圏は、品川よりも南側。大学時代も国立、吉祥寺、新宿など西側が多く、中央区や江東区のような東側には縁がなかったのです。そう考えると、福岡も同じです。住んでいても、まだ知らない場所は山ほどあります。もっと歩いて、もっと感じて、自分の足で自分の街を知っていかなくてはと思います。

言うまでもなく、萩についても、まだまだ知らないことは多いです。知ったつもりで、知らないことばかりと言えるでしょう。

今日は午前中にお客様と打ち合わせ、昼はランチをご一緒して、午後には福岡に戻ります。東京の朝の風と、隅田川の記憶を胸に、また次の地へと歩き出します。

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