ゴールデンウィークの最終日、映画『DUNE』を観ました。『DUNE』は、フランク・ハーバートの同名小説を原作とした壮大なSF映画で、2021年に公開されました。監督はドゥニ・ヴィルヌーヴで、美しい映像美と壮大な音楽スコアが特徴です。
簡単にストーリーを書いておきましょう。もう公開されて時間が経っているので、ネタバレということもないと思います。
遠未来の宇宙(現在と桁が1つ違います)。全宇宙を支配する帝国と諸侯たちの間で、貴重な資源「スパイス」をめぐる争いが続いています。スパイスは宇宙航行、生命延命、超感覚的能力を可能にする唯一の物質であり、その唯一の産地は過酷な砂漠の惑星「アラキス(デューン)」です。
アトレイデス家は皇帝からアラキス統治を命じられますが、それはハルコンネン家と皇帝による罠でした。襲撃で父を失い、母と共に逃亡する主人公ポールは、アラキスに住む先住民「フレーメン」との邂逅を経て、自らの運命と力に目覚めていきます。
現在この映画はPART2まで作られています。ポールが父を失い、アトレイデス家が滅亡するまでがPART1、ポールが不思議な力を身に付けて復讐に立ち上がっていく様を描いたのがPART2です。PART2のラスト、次がありそうな雰囲気で終わるのですが、これって三部作なのでしたっけ? (あとで調べてみたら、三部作であり、『Dune Messiah』というタイトルで2026年に公開予定となっていました。これは楽しみです)
ご存じの方もいると思いますが、この原作は一度映画化されています。1984年にデヴィッド・リンチ監督によって『デューン/砂の惑星(Dune)』というタイトルで公開されています。もちろん、こちらの方も観ていますし、随分前になりますが、原作も読みました。
デヴィッド・リンチ版は、『ツインピークス』に出演していたカイル・マクラクランが主人公を演じています。わたしは彼が昔から大好きで、その流れでこの映画を観たのです。
そのせいか、デヴィッド・リンチ版を超えるものではないだろうという先入観があって、2021年版のDUNEは観ていませんでした。今回、たまたまゴールデンウィークの最終日で何か映画でも観ようと妻と話をしていて観ることになったのです。
観て、感動しました。もっと早く観れば良かったです。
もともと映画化は不可能であろうと言われた原作で、デヴィッド・リンチ版でも正直映像的には微妙でした。技術的な制約はあったにしても、世界観が第一次世界大戦、第二次世界大戦のそれで、敵役のハルコンネン家もどこか当時のソ連を彷彿とさせます。残念ながら、原作特有の世界観を再現しているとは言い難かったです。
2021年版では、その世界観が見事に描かれていました。もちろん、CGの技術が大幅に向上したということもあると思いますが、何よりも非常に丁寧に、緻密に計算尽くで作られていることに感銘を受けました。シナリオ、視覚、聴覚、五感全てに訴えかけてくる造りになっています。
世界観もどちらかというと、中世ヨーロッパの暗黒時代、つまりローマ文明が崩壊し、文化・経済・学問の発展が停滞し、教会の権威が強く自由な思想や科学が抑圧された時代、戦争や疫病、貧困が多発した世界観をイメージさせ、より原作に近くなっています。
SFとして観るよりも、『ロード・オブ・ザ・リング』や『キングダム・オブ・ヘブン』といった作品として観る方がもしかしたら正しいかもしれません。ゲームで言うと『ダークソウル』や『エルデンリング』。こういった作品が好きな方に、是非お薦めします。
この映画に出るためにレベッカ・ファーガソンは『ミッション:インポッシブル デッドレコニング』シリーズへの出演を断ったとのことです。映画を観るまでは、何故だろうと疑問に思っていましたが、今回実際に観てその理由が分かりました。
この作品は明らかに芸術作品であり、単なるエンタメ映画ではありません。映画人として、自分のキャリアの上で、こういった作品に出演することは大きな意義があると、彼女が考えたのも無理はありません。
あまりにも気に入ってしまったので、PART1もPART2も購入してしまいました。家で仕事するときは、BGVとして流しておきたいと思います。なんにせよ、先入観は良くないですね。映画にしろ、本にしろ、いったん自分の思い込みは置いておいて、接してみることの大事さを、あらためて思い知らされました。
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