新しい物書きのこころみ – Audibleを使ってみて

コラム

結論からいうと、iOSの読み上げ機能の日本語の不自然さに違和感を覚え、Audibleの試用を始めました。

最近暖かくなってきたのにともない、朝のウォーキングを外でするようになりました。その際、Air Pods Proで聞くコンテンツについて、音楽ではなく、できれば本を読みたい(聴きたい)と考え、KindleをiOSの読み上げ機能で聴きました。

しかし、残念ながら、正しくない日本語の読み方がどうしても気になって、本そのものに集中できませんでした。もともとAudibleは読みたいと思う本がないとか、先入観があって試さなかったのです。

今回、やむを得ずAudibleを始めてみて、驚きました。思ったよりもラインアップが充実していたのと、頭の中での情景の再現性が高かったからです。今日は、その驚きと、そこから今後の「物書き」について思ったことを書いてみます。

まず、Audibleのラインアップです。著作権の切れた古いものしかないのではないか、とか、好きな作家の本が対応していないのではないかと、疑っていました。

しかし、新刊もちゃんと対応していて、例えば、2024年の本屋大賞になった『成瀬は天下を取りにいく』や、ネトフリのドラマになって話題になった『地面師たち』も対象になっていました。

もちろん、わたしの好きな池波正太郎や(しかも、古今亭志ん朝が朗読しているものもあります!)、司馬遼太郎、聴き放題の対象ではありませんが、藤沢周平の本もあります。これは、聴かなければ損、と思いました。

実際に聴いてみると何の抵抗もなく、スムーズに頭に入ってきます。やはり、専門の方が読み上げる「朗読」の品質は高いです。音声であるのに、文字が脳内で再現されます。目で文字を追って読むよりも、頭の中に映像が残る感じです。

Audibleは月額1,500円ですが、このラインアップと品質であれば、決して高くないと思います。毎朝聴くことを考えると(今後は通勤のバスの中でも聴こうかな)、十分元が取れます。

今朝も、今村翔吾の『塞王の楯』を聴きながら歩いていて、序章から第1章あたりまで進みました。この文章を書いているいまでも、聴きながら浮かんできた情景が頭の中に残っています。一乗谷で逃げ惑う民衆、城を落ちのびていく武者たちとその甲冑の音。炎の熱さや、ものの焼ける匂いまで感じられました。

本を「聴く」という行為も、なかなか良いものだと思いました。「読む」という行為は「ながら」に向いていません。歩きながら、運動しながら、料理をしながら、「聴く」ということはできても、「読む」のは難しいです(ジムでKindleを読みながら歩くことはできますが、これもページ送りのために読み上げ機能が必要です)。

Audibleを聴きながら、これからの本は、「読む」だけでなく、「聴く」時代がやってくるのかもしれないと思いました。既に、ラジオは復権の兆しがあり、YouTubeでも動画を観るというよりは、聞き流すために再生しているというひとも多いと聞きます。

本も、読みやすいだけでなく、聴きやすいものが求められてくるのかもしれません。もともと文章は、人に伝えるコミュニケーションの手段として生まれましたから、分かりやすくすることは当然です。しかし、自分が文章を毎日書くようになってくると、必ずしもそうなっていないと感じることが多いです。

文章が自分のひとりごとになっていないか、自分しか分からないような前提で書いていないか、そんなことが気になっていました。特に、ジャーナリングを始めてから分かったのですが、自分向けの文章と、ひとさまに読んでいただく文章は、おのずと文体も内容も全く異なるにもかかわらず、いままではそれを意識せずに書いていたような気がします。

noteは誰に読んでいただけるのか分かりませんが、少なくともジャーナルではなく、ある一定の読者を想定して書いているはずものです。ひとりよがりの文章にしてはいけないのですが、無意識にそういう文章になってしまいます。

最近、わたしはこういうひとりよがりなことがないように、AIを使うことにしています。Cloudeはそういう意味で、校正だけでなく、最初にわたしの文章を読んでくれる相方のような存在です。彼(彼女?)は、遠慮なくわたしに、ここは前提が分かりにくいですとか、ここは説明が必要です、と指摘してくれます。

そして、今回、Audibleを使うようになって感じたのは、自分が書いた文章を必ず音読するようにしよう、ということです。音読して分かりやすく、すっと耳に入ってくれば、おそらく良い文章と言えるのではないでしょうか。

ちょっと前からわたしはYouTubeでポッドキャストを始めました。noteの原稿をAIにポッドキャスト用に書き直してもらって、それをわたしが読み上げるという形式です。しかし、今回、Audibleで気付かされたように、これを、自分の文章が聴きやすいものになっているかどうか、チェックするために利用してもいいなと考えています。

つまり、わざわざポッドキャスト用の原稿にせず、自分のnoteの原稿そのものを、わたしが朗読するのです。そして、自分でそれを聴き直して、聴きやすいか、わかりやすいか、をチェックする。今後はそういった運用をしていきたいと思います。

というわけで、ポッドキャストの方も今後毎日更新していきます。過去のnoteも少しずつ遡ってポッドキャストにしていくつもりです。その過程で、文章も適宜修正してブラッシュアップしていこうと考えています。ポッドキャストの方も是非ご視聴いただければ幸いです。

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佐藤正子(さとうしょうし)の「猫のひとりごと ポッドキャスト」はnoteの記事と連動したポッドキャストです。音声で聴くも...

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