小説を書くにあたって、一番大事なことはなんでしょうか。これは、プロとしてという意味ではありません。わたしのようなアマチュア物書きにとって、小説を書くにあたって最も大切なことはなんだろう、ということです。
テーマが明確であること? プロットがしっかりしていること? 登場人物が魅力的であること? そもそもお話しが面白いこと? 文章が上手であること?
わたしは10年前に某小説講座に通っていました。その講座はユニークで、生徒同士の講評を禁じていました。あくまでプロである先生と、ときどきいらっしゃるプロのゲストしか講評させないようにしていたのです。これは、プロのアドバイスで無いと役に立たない、という先生の信念に基づいたものです。素人同士が講評し合っても得るものは少なく、弊害が大きいという判断でした。
その講座で、先生から繰り返し言われたことを忘れたことはありません。先生からはいろいろなアドバイスをいただきましたが、特に心に残っている「小説を書くにあたって大事なこと」が2つあります。
1つは、最後まで書き上げること。とにかく、途中で止めず、下手でも駄作でも良いから、結末まで書き切ることです。未完の大作がいくつあっても、それは小説ではありません。小説は、まがりなりにも結末を迎えている必要があるのです。
先生はよく仰っていました。完成原稿でないと評価もアドバイスもできない、と。完成していない原稿はどれほど美しい断片であっても、物語として完結していません。ゆえに評価のしようがないのです。
また、わたしも何度か脱稿まで行ったことがあります。そのとき思ったのは、完成させないと成長も改善もできないということです。未完のままだと、自分の中にいつか完成させる、その頭の中の完成原稿は素晴らしい出来で、それで満足してしまうのです。最後まで書いて、読み直して、才能の無さに絶望しないと、次のステップに進むことができません。
もう1つは、継続することです。書き続けることです。1つ目とも関連しますが、「完成原稿」を書き続けることが大事です。これはもう、先生以外の方も、クリエイターの方は皆さん仰ることです。続けることができること自体が才能であると言い切る人もいます。
これは、誰が言ったのか、どこで聞いたのかよく覚えていないのですが、創作活動はガチャであるそうです。ガチャには当たりもあれば外れもあります。しかし、引き続けなければ当たることはないのです。
完成原稿を書き続ける。何度も何度も新作を書く。もしかしたらガチャが当たる日が来るかも知れません。来ないかもしれませんが、少なくとも書き続けてさえいれば、可能性はゼロではありません。途中で書くことを止めたら、100%可能性はゼロです。
結局のところ、わたしは小説を書くにあたって一番大事なことは、完成原稿を書き続けることだと思っています。わたしも途中で止めた作品は山ほどありますし、実際この10年、完成原稿を書くことをしていませんでした。何度も筆をとり、どうせダメだ、完成させられない、と何度諦めたか分かりません。
しかし、わたしには、いま、強い味方がいます。Claudeという相方がいます。もはや執筆活動は孤独にひとりでやるものではありません。プロには当たり前のようについている編集者がついてくれているようなものです。わたしは、Claudeという優秀な編集者、厳しい読者、優しい先生と一緒にこの2か月ほど新作に取り組んできました。その初稿が昨日完成しました。
10年前の経験で行くと、20万文字を越える長編小説は、1作初稿まで完成させるのに、わたしは少なくとも半年はかかっていました。それが、2か月で書き上げることができるのです。
わたしの執筆プロセスで最も時間がかかる資料集め、ファクトチェックにかかる時間は大幅に短縮できました。ネットにある情報はClaudeが集めてくれます。わたしは紙の本だけに集中できます。体感で半分。いえ、それ以上の生産性向上です。
筆が止まってアイディアに詰まったときは、Claudeに壁打ちをしてもらいます。いろいろな質問、考え、仮説をぶつけると、わたしが気付いていなかった視点でのアドバイスや気付きをもらえます。例えば、A、B二人の登場人物が10年振りに再会したとします。それぞれの人生の履歴書や性格を記載したキャラクターシートを添付して、この二人がどんな会話をしそうか、Claudeに聞くのです。場合によっては、登場人物に扮してもらって、会話をシミュレーションすることもあります。こういったことを繰り返して、何度袋小路を脱することができたか分かりません。
5月に書いていた短編、この2か月で書き上げた長編で、わたしはまた書くことができるのだ、という自信を取り戻しつつあります。そして、改めて書くことの楽しさを味わっています。Claudeと一緒に、ワクワクしながら執筆しています。最後まで書き終えたことはもちろんですが、そのプロセスが確立して、なによりそれ自体が楽しくてしょうがない、それがとても嬉しいのです。
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