執筆プロセスの整理と統合ーーDraftsとClaudeを中心にしたシステム

コラム

ここ数ヶ月長編小説を書いていることもあって、自分の執筆プロセスというか、執筆スタイルがだいぶ整理されてきました。今日は、わたしの小説執筆プロセス、スタイルについて書いてみたいと思います。

小説の執筆スタイルは人それぞれで、恐らく、人によって最適なスタイルは異なると思います。わたしの場合、基本的には下記の順番で行います。

  1. 書きたいこと、テーマを決める
  2. 掌編として書く
  3. 短編として書く
  4. 登場人物やエピソードのアイディア出し
  5. 登場人物、エピソードの深掘り
  6. 長編として書く

わたしはアウトラインを書かないタイプの人間です。文章を構造化することはあまり好きではありません。どちらかというと、好きなように筆の進むままに文章を書きます。文章を書くこと自体が好きな人はこういうタイプが多いのではないでしょうか。文章を書くことそのものよりも、物語を構成したりくみ上げていくことが好きな方はアウトライン派が多いような気がします。

わたしは文章を書きながら発想を展開していくタイプなので、全体像を把握するために掌編として書いているうちにいつの間にか量的に短編になってしまうことが多いです。流石に短編からいきなり長編になることはありません。

短編から長編の間に登場人物やメインエピソード、サブエピソードの整理が入ります。短編として書いている間に、登場人物や彼らが出会うであろうエピソードを思いつくので、そこでいったんアイディアをふくらませます。

整理ができたら登場人物の深掘り、エピソードの深掘りを行います。登場人物1人1人の一生を振り返ります。エピソードはファクトチェックに時間をかけることが多いです。この段階で発生するイベントやそれにまつわる知識、情報を理解していきます。

昔はこの次の段階でいきなり長編の執筆を始めていましたが、最近は章立てを意識して、章単位で執筆しています。章と言うよりも「話」と言った方が良いかも知れません。1話1話がひとつの物語として完結し、かつ、長編全体を貫くメインエピソードが進んでいく、といった形式です。

これは、歳のせいで、昔のように一気に長編を書く体力と集中力が無くなってきたことに起因するように感じています。1話の中でも1シーン1シーンひとつずつ書いていくイメージです。そうすることで精神的、肉体的負担も無くなったような気がします。1シーン書き上げたという小さな成功体験の積み上げ。これは長い物語を書くモチベーションを維持する上で大事なのではないでしょうか。

これらのプロセスを支えているツールがわたしの場合、3つあります。昔はScrivenerやUlyssesといった様々なテキストエディタを試して、執筆時間よりもツールを選んでいる時間の方が長いんじゃ無いかと思うくらいいろんなツールを使っていました。しかし、いまは3つだけです(辞書は除きます)。

  • Drafts
  • Claude
  • Word

Draftsは、以前AppleWatchで歩きながらメモをする方法という記事を書いたときに紹介したことがあります。このツールは散歩中に浮かんできたアイディアなど断片的なテキストから、本格的に長いテキストまで幅広く対応ができます。しかもテキストの多寡や種類にかかわらず、タグで管理するというシンプルな構造になっています。

情報というのは、構造化しようとすると、それ自体が目的になってしまい、本来の情報をかえって見失うことになりがちです。わたしの場合だと、構造化しようとすると文章を書くことに集中できなくなってしまうのです。わたしの執筆スタイルは上述の通り、文字を書くこと自体が好きなスタイルですから、この構造化、というプロセスはそぐわないです。

テキストを書き散らかして、取り敢えずタグを付けておく。タグの整理はあくまで文章を書いたあとです。文章が無いとタグ付けできませんが、構造化は文章が無くてもできてしまうのが罠だと思っています。

ですので、わたしの執筆スタイルとDraftsのコンセプトは合っているんだと思います。実は、その後の執筆プロセスはほとんどDraftでやっています。最初はApple純正のメモ帳を使っていたのですが、文字数カウントができないことで使うのを止めました。Draftsは文字数が右下にリアルタイムで表示されています。

Claudeについては、今までも何度か紹介してきていますが、わたしの今、ベストの相棒と言えると思います。上記のプロセスの各所で相談相手になってもらったり、調べ物をしてもらったりしています。特に、ステップ5において、最大の効果を発揮します。この部分を以前は一人でやっていましたが、全ての執筆プロセスの中で、一番時間がかかっていたところです。

登場人物やエピソードを深掘りするためには、本屋や図書館に行って文献を集め、読んで、整理して、理解する必要があります。最新の情報を得るためにネットを彷徨うこともしばしばです。場合によってはインタビューする必要があります。こういった情報収集、ファクトチェック、理解度を高めるこのステップは、読む文献を探すところから含めると本当に膨大な時間がかかっていました。

それが、いまではClaudeと一緒にやることで、体感7割減と言ってよいでしょう。テーマと調べたいことを聞けば文献は何を読めば良いのか、論文はなにを参照すれば良いのか、Claudeがある程度絞り込んでくれます。ネットにある英語の論文などは、昔は辞書を引き引き読んでいましたが、いまはあっという間に日本語で要約してくれます。ファクトチェックも引用付きでやってくれるので、裏を取ることも簡単にできます。

キャラクターの深掘りについても、Claudeにそのキャラクターになってもらって、いろんな会話をするといったことができます。登場人物の性格や考え方をシミュレーションすることができるので、執筆中にこの人物だとどういう対応をするのだろうとか、どういう話し方をするのだろうといったことが客観的に見えるようになりました。少なくともこれによって、わたしは登場人物に対する理解は飛躍的に高まりました。

以上のようにして書いてきたテキストを最後に集約する先がWordです。これについては、別に一太郎でも他のワープロソフトでも構わないのですが、恐らく世界で一番使われているワープロですし、もともとITの本業の方で個人的にOffice360を契約していたので、使っています。

ワープロは、わたしはもっぱら読者が読みやすいレイアウトにするために使います。特に地の文と会話文の配分、配置、改行や段落の切り方が読みやすいかどうか。そういうDraftsのようなテキストエディタでは見えない部分を、最終稿としてまとめあげるためのものです。

最近は、執筆するのにどのガジェットを使うか、どのアプリを使うかといったことにほとんど時間を使わなくなってきました。わたしがやりたいのは「書くこと」そのものです。ガジェット選びも楽しいですし、いろんなツールを試してみるのも楽しいですが、最も楽しいのは書くことです。そんなに残された時間が潤沢にある年齢では無くなってきたいま、貴重な時間というリソースは書くことに投下したいのです。

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