創作と消費——その意外な関係性

コラム

たまたまYouTubeを観ていたら、下記の動画がお薦めの中に出てきた。

『4分であなたを変える』という断定的なタイトルに、半信半疑ながらも惹かれてしまった自分がいた。そして何気なく観始めた私は、これはまさに私の人生だったと感じた。

ここで言う私の人生とは、「消費する側の人間」としての人生だ。本を買って読む、映画を観る、音楽を聴く、Appleの製品を買う。
当たり前のことに聞こえるかも知れない。しかし、私が子供のころからやりたかったことは、「消費する」ことではなく、「創造する」ことだった。
漫画を描きたい、演劇をやりたい、小説を書きたい。私の心の奥底にはずっとその気持ちが横たわっていた。

しかし、実際は「消費する」側の人間として、この60年を過ごしてしまった。何故だろうか。
この動画に答えがあった。私の人生は、この動画に出てくるサイクルそのものだった。つまり、

1. コンテンツを消費する
2. インスピレーションを感じる
3. 創作しようと計画する
4. 決して始めない

というサイクルをまさに繰り返していたのだ。
執筆にpomeraが良いと聞けば、pomeraを買い、いや、iPadが実はどこでも執筆するガジェットとして最適だと聞けば、iPadを買い、いや、やはりMacBookだろうとYouTuberが言えばMacBookを買う。
人のせいにするつもりはない。Freewriteなどは自分からネットを漁って見つけて、輸入して購入したくらいだ。考えてみれば、私は一種の精神的飢餓状態にあったのだ。

この動画で言えば、

– 完璧主義
– インポスター症候群
– 圧倒感
– 時間不足
– エネルギー不足
– 恐怖

という6つの要素に常に苛まれたとも言える。「インポスター症候群」とは、自分の能力や成果を過小評価し、「自分は本当は能力がないのに、周囲を騙している詐欺師(impostor)なのではないか」という不安や恐怖を抱く心理状態のことで、物書きにはよく見られる現象だ。
私の場合、某新人賞の一次予選や二次予選は通過するのに三次予選で落選することが多かったが、その際にこういった気持ちに襲われた。

「圧倒感」というのはインポスター症候群の人に見られる現象で、「すべてを完璧にやろうとして、長いToDoリストに圧倒される」という状態を指す。
私の場合は、長編を書くにあたってそのプロセスの大変さに圧倒されることはよくあった。本来は書きながら構成を組み立てていくタイプなのにアウトラインを作ろうとして、その段階で挫折したことも多い。

これらを言い訳にして、私は創造するよりも消費する側に甘んじていたのだ。
ガジェットを買うと、その飢餓感が薄れる。やる気が湧いてくる。これは、上記のステップの1から3に向かう状態だ。これ自体は悪いことではない。問題は、ステップ4だ。

始めることができないために、だんだん始めない自分が無能であるような気がしてくる。才能がないような気がしてくる。そしてまた飢餓状態に陥る。
この悪循環をこの60年間続けてきたわけだ。

しかし今になって、ようやく私はこの悪循環から抜け出そうとしている。それは、「始めている」からだ。
転機となったのは、noteでの日々の執筆だった。今年になって毎日欠かさず書き続けることで、それまでとは違う勢いが生まれた。
春には短編をひとつ書けた。夏には長編をひとつ書けた。これから、秋から冬にかけて、もう一作長編を書き進んでいる。

昔、「Just Do It」という動画が流行った。当時私は、そんなこと分かってる。分かってるけど、できないんだよ、と複雑な気持ちで観ていた覚えがある。これはまさに冒頭の動画が提示している悪循環に陥っていたことに他ならない。
しかし、今。「始める」ことができている今この動画を観ると、新鮮な感動と、今までに無かった充足感を感じる。自分のために、その動画を貼っておこう。

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