八重、九重という猫たち

コラム

日曜日は早起きができず、9時過ぎになって朝の散歩をした。土曜日もいつもの5時には起きられなかった。

最近朝起きるのが辛くなった。理由は分からない。ただ、身体と精神の状態が今までと少し違うような感覚がある。

例えば、身体のことで言えば、膝が少し痛いような気がするとか、左奥歯の入れ歯が合わないとか、ほんのちょっとしたことだ。

会社であった嫌なことを引きずるようになったような気もする。

今までは1日もすれば気にならなくなっていたし、散歩中に気持ちの整理ができていた。それが、散歩中にむしろそのときの感情が蘇って、再体験するような気分になる。

すっきりしない気持ちのまま散歩をしていたら、神社近くの茂みで子猫を見つけた。毎朝歩いていたのに気づかなかった。もしかしたら、居たのかもしれないが、暗くて見えていなかったのかもしれない。

写真を撮って相方に送り、そのまま散歩を続けた。

15分ほど経って、相方から「連れて帰る?」とメッセージが返ってきた。その場所を離れてかなり歩いてきたので、後戻りする気にはなれなかった。しかし、子猫たちのことが気になってしょうがない。

私は散歩のルートを最後だけ変更した。いつもなら公園の外周を回って家に帰るのだが、バス通に戻って散歩道を逆に辿ることにした。そうするとまた神社に戻ることができる。

その場所に猫はいなかった。あぁ、縁がなかったのかなと思った。

数分だったと思うが、声をかけてみると、茂みの奥から姿を見せてくれた。

相方にまだ居たよ、とメッセージを送った。

様子を見ていると、その子猫が茂みの奥に入り、また出てきた。おんなじ大きさの、毛色の違う子猫がついてきた。

「2匹いるよ」相方にメッセージを送った。

「2匹とも飼う?」

家には黒猫歩とキジシバ七海が居る。合計4匹は、少し無理かもしれない。私は悩んだ。

「とりあえず、猫カゴ持って車で行くよ」相方が言った。

相方の車が来るまでの間、ずっと猫たちを見ていた。

2匹とも綺麗だ。昨晩雨が降ったにもかかわらず汚れていない。茂みの上で居眠りしたり、毛づくろいを始めた。首輪はなかった。

このときまで、私はこの2匹を連れて帰るつもりでいた。

相方が神社の駐車場に車を停めて、猫カゴを抱えてやってきた。場所はGoogle Mapで知らせてあった。

2人で話しかけてみたり、カリカリをあげたりしてみたが、2匹はそばに寄ってこようとしない。1メートルほど離れてこちらを見ながら毛づくろいしている。

近所の人が通りかかったので、猫たちのことを聞いてみた。

この辺りに猫は多いが、この2匹は見た覚えがないとのことだった。汚れていないことを考えると、今日雨が止んでから捨てられた可能性もある。野良の兄弟なら、もっと数がいてもおかしくない。

「どうする?飼うなら保護猫活動している人にお願いして捕獲してもらうこともできるよ」

なかなかそばに近づこうとしない猫たちを見て相方が言った。向こうから近寄ってこないものを無理やり取り押さえて連れて行くことはできない。

「4匹か〜、会社辞められないね」

何気なくつぶやいた相方の言葉が私に刺さった。

「向こうから来てくれないのを無理やり家に連れてきても、歩や七海との相性も心配だし、今回は縁がなかったかな」

私は言った。

相方の車を待っているあいだ、私は猫たちに名前を付けていた。歩が数字の6、七海が7にちなんだ名前だから、この子たちは八重(やえ)、九重(ここのえ)。

しかし私は縁がないとあきらめた。そして改めて気づいたのだ。

ここ数日の身体的、精神的違和感、不具合の理由が、会社で仕事をすることそのものにあったことに。

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