20年ぶりくらいに、大腸内視鏡検査をしました。初めてやったのは20代のころ、東京の半蔵門病院かどこかだったような気がします。
まだウブなころだったので、検査の準備だけでドキドキしていて、無茶苦茶緊張した記憶があります。確か、病院に一泊して、前日から下剤を飲み続け、検査が始まるころにはヘロヘロでした。
本番の検査では、あたりまえですがお尻から内視鏡を入れます。当時の内視鏡はかなりデカくて、腸の中をゴロゴロ動き回るのが感じられました。
ときどきケーブルが絡むのか、先生はグルングルン内視鏡を振り回すのです。それこそ綱引きのような大騒ぎです。
やられてるこちらは、痛いやら、恥ずかしいやら、びっくりするやらで、生きた心地もしませんでした。1時間はグルングルンしてたんじゃないでしょうか。
この歳になって、20年ぶりの内視鏡検査。若かりしころの記憶が蘇ってきます。あのころに比べればだいぶ擦れてきているので、恥ずかしさや緊張はありませんでした。
ただ、あのグルングルンをまた体験するのか……。わたしの神経はそこに集中していました。
最近の病院はすごくて、まず一泊する必要はありません。前日の食事に注意点はありますが、当日朝から下剤を飲み始めます。
1リットルほどの下剤を飲むあいだ、個室に案内されました。深々と沈む1人用のソファに身体を任せることができます。なんと、テレビも付いていて、アマプラとネトフリを見放題です。
わたしは『Darkest Hour』というウィンストン・チャーチルの映画を観ました。チャーチルが逆さまのVサインを見せるあたりで、下剤終了。
検査室に入ってからのことは、正直、覚えていません。だって……
最近の大腸内視鏡検査って、麻酔でやってくれるのですね。まったく知りませんでした。
ベッドに横になり、点滴が始まったと思ったら、つぎに気付いたときには検査も終わり、別室にいました。嘘みたいに簡単……。
医学の進歩、万歳! 夢を見ているような気分でした。そのあと、先生から説明を受けるときに写真を見せてもらったので、間違いなく検査はやっているのです。
終わった……という安心感と、ほんのちょっとの物足りなさ。あのグルングルンを、ほんとうは期待していたのではないか。そんなことを考えながら帰途につきました。