IT技術者として、また物書きの端くれとしての生活を送る中で、私は数々のキーボードを渡り歩いてきました。その遍歴は、東プレのREALFORCE系を3台、HHKB(Happy Hacking Keyboard)系を6台という数字が物語る通り、まさにキーボードの沼に足を踏み入れた証です。
最初に手にした東プレの静電容量無接点方式の打鍵感は、まさに感動の一言でした。その滑らかでしっとりとしたキーの感触は、長時間のコーディングや執筆作業を快適にしてくれました。しかし、やがて私はよりコンパクトで持ち運びやすいHHKBに惹かれ、合計で6台も手に入れることになるのです。HHKB独特のレイアウトと打鍵感は、指先に心地よいリズムを生み出し、思考の流れを妨げることなく作業に集中できました。
しかし、そんなキーボード遍歴を経て辿り着いた結論は明快です。コードを書くエンジニア、そして物書きにとって最も重要なことは、「いつ、どこでも、どんな環境でも書けること」です。道具へのこだわりは確かに生産性を向上させる要素ですが、どんなキーボードであっても一定の成果を出せることこそが、真のプロフェッショナルである証なのです。
とはいえ、現在私が愛用しているキーボードについても触れておきましょう。デスクトップではHHKB。これは不動です。モバイル環境で使っているのは、Logicool MX KEYS mini for mac KX700MPGです。
このキーボードは非常に優れた打鍵感を持ち、指先から伝わるフィードバックが心地よく、長時間の作業でも疲労感を抑えてくれます。キーの反応速度も申し分なく、まさに理想的なパートナーです。しかも性能の割に軽くコンパクトです(506.4 グラム。HHKBは電池を含めないで830グラムから840グラム)。
そして、改めて感じるのは、キーボードを選べないノートパソコンよりも、好みのキーボードを接続できるiPadの方がモバイル環境では最適なのではないかということです。
今まで、MacBook ProやMacBook Air含む、さまざまなノートパソコンを試してきましたが、そのキーボードに満足できることはありませんでした。しかし、iPadとお気に入りのキーボードの組み合わせは、モバイル環境でも最高の執筆体験を提供してくれます。
キーボードの沼を渡り歩いた末に辿り着いた答えは、「どんな環境でも書ける力」と「心地よい道具の存在」の両立。そのバランスこそが、私たちの創造性を最大限に引き出してくれるのです。